第14号心理3分閲覧 38
発行 · 雑学書庫 別館
部屋に入ると、何をしに来たのか忘れてしまいます
台所の敷居をまたいだ途端、しようとしていたことが頭からすっぽり抜ける瞬間があります
台所に何を取りに来たのか、敷居をまたぐと思い出せなくなります。記憶力が悪くなったのではなく、部屋が変わることで頭の中の場面が切り替わり、しようとしていたことが前の場面に残ってしまうのです。心理学では、これをドアウェイ効果と呼びます。
用事は部屋と結びついています
しようとしていたことは、その部屋と結びついていることがよくあります。ソファで「水を取ってこよう」と思うと、その考えはソファやつけていた画面、喉の渇きとひとまとまりになっています。
台所に入ると、食器や冷蔵庫の音、においが新たに入ってきます。頭は新しい部屋を把握するのに忙しく、さっきまでひとまとまりになっていた考えは脇へ押しやられます。それで、ドアの前で立ち止まってしまうのです。スマートフォンを見ながら歩くと忘れやすくなるのも、同じ流れです。新しく入ってくる情報が多いほど、それまでの用事はさらに遠くへ押しやられます。
敷居が場面を切り替えます
ドアは、場面が切り替わる場所です。映画で場面が切り替わるように、体が別の部屋に入ると、頭は前の場面を整理してしまい込みます。アメリカのノートルダム大学の実験では、同じ距離を歩いても、ドアを通った人のほうが、たった今移動させた物について混同することが多くありました。画面の中の部屋を歩くときも、実際の部屋を行き来するときも、似た結果が出ました。
ただし、ドアが記憶を消すわけではありません。その後の実験では、この効果はいつも現れるわけではなく、頭の中にほかの考えがたくさんあるときに、より現れやすくなりました。忙しいときや別のことを考えているときに、とりわけ忘れることが多いのも、そのためです。
元の部屋に戻ると思い出せます
元の部屋に戻ると、考えが戻ってくることがよくあります。ソファに座っていたときの姿勢や、見ていた画面が手がかりを取り戻させてくれます。記憶は最初に思い浮かべた場所で取り出しやすいという実験結果とも一致します。戻るのが面倒なら、その場に立って、さっきまで座っていた自分の姿を思い浮かべるだけでも役立ちます。
あらかじめ防ぐ方法も簡単です。用事を一度声に出して言ったり、「スプーンと箸」のような短い言葉を繰り返しながら歩いたりすると、忘れにくくなります。空のコップのように、用事とつながる物を手に持っていくのも、よい手がかりになります。忘れたからといって、自分を責めることはありません。部屋は変わり、用事はまだ前の部屋に残っていたのです。
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忘れた用事は、前の部屋に残っています。敷居が場面を切り替えたのです。
まとめ・参考メモ · ドアウェイ効果の研究(Radvanskyほか). ノートルダム大学のRadvansky研究チームは、2011年に、ドアを通ると記憶が曖昧になる現象を報告しました。2021年の追試では、頭が忙しいときにだけはっきり現れたため、効果の大きさについては議論があります。
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