第176号心理3分閲覧 111
発行 · 雑学書庫 別館
やりかけの仕事は、なぜ頭から離れないのでしょう?
「ツァイガルニク効果」の始まり、追試でわかったこと、作業を中断するときのコツ
やりかけのことが何度も頭に浮かぶのはよくある経験で、心理学ではこれを「ツァイガルニク効果」と説明してきました。ところが最近、研究をまとめて調べたところ、終わっていないことのほうがよく覚えているという部分は思ったより弱いものでした。代わりに、中断したことをまた続けたいという気持ちはかなりはっきり表れました。
ウェイターから始まった実験
1920年代のドイツ・ベルリンで、心理学者ブルーマ・ツァイガルニクは、手ですぐに終えられる簡単な課題をいくつも人々にやってもらいました。そのうち一部は、わざと途中でやめさせました。あとでどんな課題をしたか尋ねると、人々は終えた課題より途中でやめた課題を多く思い出したと、1927年に発表しました。
この実験は、会計前の注文はよく覚えていたウェイターが、会計が終わるとすぐ忘れてしまう様子から思いついたという逸話でも有名です。その後「終わっていないことはよく覚えている」という話は、勉強法やドラマの次回予告、広告の話にまで広く使われてきました。
追試では記憶の差はほぼなし
2025年、スイスのベルン大学の研究チームは、このテーマを扱った古い研究から最近の研究まで59本を集め、結果をまとめて計算しました。ツァイガルニク本人の研究を除くと、中断した課題と終えた課題を思い出す比率は0.99対1で、ほぼ同じでした。「中断したことは必ずよく覚えている」というよくある思い込みは当たらないわけです。
研究チームは、実験を行う人の権威や課題への没頭の度合いといった状況によって、効果が現れたり消えたりすると考えました。昔の実験環境ではそうした条件がもっと多かったのかもしれない、という解釈です。
続けたい気持ちははっきり
同じ分析でよりはっきり出たのは、別の側面でした。機会さえあれば、人々は途中でやめた課題の約67%に自分から再び取りかかりました。半々で選ぶ場合よりも明らかに高い割合です。この傾向は、ツァイガルニクの同僚だったマリア・オフシャンキーナの名を取って「オフシャンキーナ効果」と呼ばれます。
つまり、やりかけのことが気にかかる感じは、記憶が良いからというより、片づけたい気持ちに近いのです。作業を中断するときは、次にやる最初の一歩を一行書いておくとよいでしょう。計画を立てたら頭の中で巡る考えが減ったという実験結果もあるので、退勤前や寝る前に試してみる価値があります。
やりかけのことをよく覚えているという証拠は弱いものの、中断したことを続けたい気持ちははっきりしています。
まとめ・参考メモ · Humanities and Social Sciences Communications 論文. Ghibellini・Meier、2025-07-01のメタ分析、59本:中断課題の想起比率0.99(差なし)、再開率約67%。状況や個人差で結果が変わりうるとしている
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